『サイエンス入門Ⅰ・Ⅱ』
- 作者: リチャード・A.ムラー,Richard A. Muller,二階堂行彦
- 出版社/メーカー: 楽工社
- 発売日: 2011/10/04
- メディア: 単行本
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- 作者: リチャード・A.ムラー,Richard A. Muller,二階堂行彦
- 出版社/メーカー: 楽工社
- 発売日: 2012/06/01
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サイエンス、そう科学。
著者はカリフォルニア大学バークレー校の物理学教授。
この本も、大学で行っていた講義がベースになっている。
サイエンスとはいうものの、ほとんど物理学のお話。しかもハイテック。
上記の例は、現代社会に当たり前のように存在するけれども、その原理まで知っている人はそう多くはないだろう。
そもそも知らなくても使いこなせてしまうわけだし。
ぶっちゃけ、私もこの本を買ってからずっと積ん読状態だった。
勢いで買ったはいいが、物理は数学絡んでくるから…
大学受験で数学アレルギーになった身としては中々に抵抗があった。
で、実際に読み始めてみたらページが進む進む。
というのも、著者が「はじめに」で
物理学は数学抜きでも学べるものでしょうか。もちろんです!数学は、計算のための道具です。ただし、物理学の本質ではありません。(中略)マックスウェルの方程式を知らなくても、光がどういうものかは理解できます。
と心強いことを言ってくれているから。ありがてぇありがてぇ。
実際、本文中で計算式は出てくるものの、すっ飛ばしても大体の理解はできた(はず)
個人的に面白かったのは、1巻の「原子核と放射能」、「連鎖反応と原子炉と原子爆弾」と2巻の「不可視光」。
どうして臨界反応が起こるのか?
そもそも、なんで核分裂であんなにエネルギーが生まれるのか。
なぜ赤外線ゴーグルはあのように見えるのか等々。
読んでいて、「ほんとに何も知らなかったんだなぁ」と実感する。
高校で物理を選択しなかった私でも理解できるように書いてあるので、入門としては申し分ないかと。
そして何より面白い。
物事の原理を知っていれば、物事を判断する時の大きな武器になる。
偉そうな専門家がテレビで言っていることが本当に正しいのか?
情報を鵜呑みにするのではなく、自分なりに考えることができる。
読む前よりも科学リテラシーがついた(ような気がする)
『最高の戦略教科書 孫子』
といっても、ガチガチの学術書ではなく、ビジネス書なので読みやすい。
『孫子』を読んでからこちらを読んでみると新しい発見があるかも。
不特定多数の競争相手が存在する状況で、如何に勝者となるか。
これは何も孫子の時代に限ったことではなく、現代も同じなわけで。
僕が岩波の『孫子』を読んだのは大学生の時で、当時周りの友達からは「またマニアックな本読んでるね」位の反応だった。
文学部の同期ですらこんな反応だった。
でも、僕は周りに布教しなかった。
今思い返すと、自分だけが知っていた方が得だろうと考えたからだろうな。
器ちっちゃい。
本書の中でも出てくる、「情報の格差」。
自分は知っているけれども相手は知らないという状況ならば、相手に対して一歩先んじることができる。
常に主導権をこちらが握り続けるには、これが重要。
孫子の一節「善く戦う者は、人を致して人に致されず」
最近、ビジネス書やビジネス雑誌で孫子が取り上げられていることもあるので、『孫子』を知っている人が増えてしまうかもしれない。
将来、自分が『孫子』を知っている人と勝負(ビジネスなりなんなりで)することになった場合に備えて読んでおくといいかもしれない。
『ビッグデータ・ベースボール』
ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法
- 作者: トラヴィス・ソーチック,桑田健,生島淳
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2016/03/16
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日経新聞の書評で紹介されて面白そうだから買ってきた。
野球を数学的な観点から見るというとセイバーメトリクス。それを扱った『マネー・ボール』も数年前に映画化されたことは記憶に新しい。
しかし、野球の本場アメリカでは『マネーボール』から更なる進化が起こっていた。
タイトルにもある通り、ピッツバーグパイレーツは1993年から2012年まで20年連続負け越しというスポーツ界の不名誉記録保持者。暗黒も暗黒、よくファンも応援するなぁというレベル。
当然チームのGMや監督の責任問題にも発展するわけで、自分たちのクビがかかった両名は打開策を講じようとする。
しかし、潤沢な補強費があるわけでもないパイレーツは強打者やエースをFA市場から取ってくることは不可能。どうするか?
そこで両者が考えたのが守備。
まず、パソコンや映像機器の進歩によって集められた打球や投球の膨大なデータを基に、打球が飛ぶ方向を予測し、それに合わせて内野手の守備位置を変える。
また、データを解析し『ピッチフレーミング』なる新しい概念(ボールかストライクか際どい投球をストライクのように捕球する捕手の技術)を生み出し、それに長けた捕手を獲得するetc
マネー・ボールでは、誰もが知っているがあまり重要視されていなかった出塁率という数字に注目することで、市場価値を低く見積もられていた選手を安く獲得し、勝てるチームを作るというものだったが、パイレーツのケースは、近年のビッグデータ活用によって初めて表に出てきた数字が基になったもの。それをデータ野球オタクのスタッフたちが加工して初めて意味のあるものになる。
データの洪水の中から価値のある数字を読み込み、新たな価値を創り出していくということに加えて、監督や選手に対してデータの有用性を信用してもらうことが重要。
よくある現場とトップの溝が生じてしまっては上手くいかない。この辺の問題を解決していく様は仕事でも共通するものだなぁと共感。
結局どんなデータで説得するにしろ、人と人のコミュニケーションであるという点では本質は同じなのだろう。
それにしても、MLBは使えると思ったら取り入れるのも早い。
NPBでもこういうデータに基づいた野球がもっと広まると面白いのになぁ。
『時計仕掛けのオレンジ』
時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)
- 作者: アントニイ・バージェス,乾信一郎
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/09/05
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大学生の時に一度読んだものを再読。
当時の読書記録が残ってないのでどんな感想を抱いたか覚えてないorz
なので、実質初読。
とんでもない不良少年のアレックス君がふとした事件で逮捕され、国が新たに導入しようとする犯罪者更生プログラムの被験者となるお話。
このアレックス君、徒党を組んで暴力振るうわ、押し込み強盗するわ、強姦するわのどうしようもない非行少年。しかも15歳て…
そんな彼が逮捕され、犯罪者厚生プログラム「ルドビコ法」を受けることに。
「ルドビコ法」は、被験者にひたすら暴力的な映像や写真を与えることで、暴力的な行為に対する反射的な嫌悪感を植え付ける。そして、社会的に善とされることしかできないように調整されてしまう。
自由意志に基づいて行われた善に意味があると作中の登場人物は言う。
機械的に条件付けされた善しかできないのならばそれは人間ではなく機械。
「自由意志こそが人間の人間たる所以であり、それを奪う権利は誰にもない」作者が言いたいことはこういうことなのかな。
作中、「ルドビコ法」の実施中、嫌がるアレックス君に対して嬉々として暴力映像を流す研究者たちの姿が物語中で一番醜悪。
権力の怖さと暴力性を垣間見た気がしました。
まぁ、アレックス君もやったことがやったことなので、自業自得とも言えるんですが。(ルドビコ法への参加も自分から言っているし)
あと、個人的に心に残ったものが作中出てくる独特なことば。
・ナッドサット
・ブリトバ
・デボーチカ
・ドルーグ etc…
意味が気になる方は本作を読んでみよう。
幼年期の終わり
ある日、地球に超巨大な宇宙船団がやってくる。
それらは侵略を開始するわけでもなく、ただ上空にいるだけ。
オーバーロード(上帝)と呼ばれる彼らの目的は、人類を平和裏に監視すること。
極力人類に干渉せず、目的の明確な説明もない。 対して人類側は、困惑しながらもその秩序を受け入れていく。
やがて彼らの驚異的な科学力と知力の前に人類同士の争いや国境は無くなり、人類は空前の平和と繁栄を享受するようになる。(週の平均労働時間が20時間て…)
果たしてオーバーロードの目的とは?
そして人類はどこへ向かうのか?
感想を書くとネタバレになりそうなので、下に書きます。
後半で明かされるオーバーロード達の目的とは、彼の更に上位に存在するオーバーマインド(上霊)の命によって、人類を進化させることにあった。
進化した人類は、個を消失しオーバーマインドの一部となる。
『火の鳥』のコスモゾーンみたいに。
オーバーロードたちはそのお目付け役のようなものだった。
彼らは、オーバーマインドの一部になれないのでこの役を担っていた。
その進化は、まだ精神構造が固まっていない子供たちから始まっていく。
つまり、「新人類(子供たち)」と「旧人類(大人たち)」とでも呼ぶべき両者はここで種として断絶する。
読む前は、「進化」という言葉が持つ前向きな雰囲気から何となく結末を楽観視していたけれども、この部分で進化が持つもう一つの側面、旧世代との決別に気付きゾクッとした。
我々ホモ・サピエンスだって、それ以前の類人猿から進化してきたのであって、いきなり今の状態で地球に存在したわけではない。
理屈では分かっていても、心の奥では現人類を特別視していたのだろう。
我々も宇宙の規模からみれば何も特別なことはないのだ。
個と集団。意識とは。人類とは。そんなことを考えさせられる楽しい読書でした。
1984
- 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/07/18
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舞台は、ビッグブラザーなる指導者率いる「党」が支配する「オセアニア」(イギリス、南北中央アメリカ、オーストラリア、アフリカ南部で構成)
四六時中、テレスクリーンなる機械で監視され、プライベートは存在しない。
思想や恋愛も党によって規制され少しでも異質な言動が見られれば粛清されてしまう。
まるで監視社会のモデルケース。
この息苦しい社会で主人公であるウィンストン・スミスは、ある事件をきっかけに党の正統性に疑問を持つようになる。そしてある時、党への反抗心を隠し持つ女性ジュリアと出会い、党への静かな反乱を開始する。
そしてついには党の支配を打ち倒し、この監視社会を解放する。
めでたしめでたし。自由バンザーイ!
と、そんなハッピーエンドとはいくわけもなく。
3章あるうち最後の3章目は党に捕まったスミスがひたすら拷問されるというヘビーな流れ。終わりもかなりエグいものとなっています。寝る前には読まないほうがいいかも。
権力は手段ではなく目的。
そして権力とは相手を支配する力。
権力自体が目的となったとき、その体制は盤石になる。
権力を握った結果、贅沢三昧からの堕落。そして反乱というのが歴史的に見られるよくあるパターン。(中国史とか)しかし、権力を持つことそれ自体が目的となった場合、権力側はその体制維持のために反逆者が生まれるようなことを絶対にしないだろう。
国内が完全に統制されても他国による侵略で体制が崩れるかもしれない。そう考える気持ちはわかる。
しかし、もしも侵略してきた国も同じような体制だったとしたら…
実際、物語の中では「ユーラシア」と「イースタシア」という国の存在が語られるが、その体制は「オセアニア」とほとんど変わらない。そして、戦争は国内統制と各国の余剰物資を消耗するためだけの八百長にすぎない。
僕はこの部分を読んでとても怖くなった。もう打つ手がないじゃんと…
巻末、トマス・ピンチョンが解説で言う「人間として食い止めがたい権力中毒」はオーウェルが生きた時代特有のものではないだろう。ちょっとのきっかけさえあればそれは今の時代にも顔を出すのではなかろうか。
『人口から読む日本の歴史』
タイトルの通り、日本の歴史を人口という切り口から見てみようというコンセプトの本。
日本の歴史上、人口動態に影響を与えた社会的変化には4つの波がある。下記のシステムがそれ。
①縄文文化システム(縄文時代)
②水稲農耕化システム(弥生~鎌倉時代)
③経済社会化システム(室町~江戸時代)
④工業化システム(明治~現代)
①から徐々に社会が変化を遂げ、それに合わせて人口も増減を繰り返す。
しかし、江戸時代にもなると人口変動が少なくなってくる。
何故か?
それは
生活が安定してきた世の中で、将来的な生活水準の低下を恐れた人々が間引きや堕胎を頻繁に行ったから。
間引きというと食い扶持を減らすために行うものというイメージがあったので、上記のような動機は個人的に新鮮。
相続する時に兄弟が多ければ、その分一人あたりの相続できる財産は減るからなぁ。
どこで読んだか覚えてないけど、中国は歴史的に均分相続だったような。
現代の感覚からすれば堕胎や間引きに違和感を感じがちだけども、当時の人々にとってはそれこそ死活問題だったわけで。
私の日本史に関する知識が乏しいので、示されるデータについて判断できないところがもったいない。
もう少し日本史の勉強をしてから読むとまた違った視点が得られるのかな。