『ビッグデータ・ベースボール』
ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法
- 作者: トラヴィス・ソーチック,桑田健,生島淳
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2016/03/16
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
日経新聞の書評で紹介されて面白そうだから買ってきた。
野球を数学的な観点から見るというとセイバーメトリクス。それを扱った『マネー・ボール』も数年前に映画化されたことは記憶に新しい。
しかし、野球の本場アメリカでは『マネーボール』から更なる進化が起こっていた。
タイトルにもある通り、ピッツバーグパイレーツは1993年から2012年まで20年連続負け越しというスポーツ界の不名誉記録保持者。暗黒も暗黒、よくファンも応援するなぁというレベル。
当然チームのGMや監督の責任問題にも発展するわけで、自分たちのクビがかかった両名は打開策を講じようとする。
しかし、潤沢な補強費があるわけでもないパイレーツは強打者やエースをFA市場から取ってくることは不可能。どうするか?
そこで両者が考えたのが守備。
まず、パソコンや映像機器の進歩によって集められた打球や投球の膨大なデータを基に、打球が飛ぶ方向を予測し、それに合わせて内野手の守備位置を変える。
また、データを解析し『ピッチフレーミング』なる新しい概念(ボールかストライクか際どい投球をストライクのように捕球する捕手の技術)を生み出し、それに長けた捕手を獲得するetc
マネー・ボールでは、誰もが知っているがあまり重要視されていなかった出塁率という数字に注目することで、市場価値を低く見積もられていた選手を安く獲得し、勝てるチームを作るというものだったが、パイレーツのケースは、近年のビッグデータ活用によって初めて表に出てきた数字が基になったもの。それをデータ野球オタクのスタッフたちが加工して初めて意味のあるものになる。
データの洪水の中から価値のある数字を読み込み、新たな価値を創り出していくということに加えて、監督や選手に対してデータの有用性を信用してもらうことが重要。
よくある現場とトップの溝が生じてしまっては上手くいかない。この辺の問題を解決していく様は仕事でも共通するものだなぁと共感。
結局どんなデータで説得するにしろ、人と人のコミュニケーションであるという点では本質は同じなのだろう。
それにしても、MLBは使えると思ったら取り入れるのも早い。
NPBでもこういうデータに基づいた野球がもっと広まると面白いのになぁ。