幼年期の終わり
ある日、地球に超巨大な宇宙船団がやってくる。
それらは侵略を開始するわけでもなく、ただ上空にいるだけ。
オーバーロード(上帝)と呼ばれる彼らの目的は、人類を平和裏に監視すること。
極力人類に干渉せず、目的の明確な説明もない。 対して人類側は、困惑しながらもその秩序を受け入れていく。
やがて彼らの驚異的な科学力と知力の前に人類同士の争いや国境は無くなり、人類は空前の平和と繁栄を享受するようになる。(週の平均労働時間が20時間て…)
果たしてオーバーロードの目的とは?
そして人類はどこへ向かうのか?
感想を書くとネタバレになりそうなので、下に書きます。
後半で明かされるオーバーロード達の目的とは、彼の更に上位に存在するオーバーマインド(上霊)の命によって、人類を進化させることにあった。
進化した人類は、個を消失しオーバーマインドの一部となる。
『火の鳥』のコスモゾーンみたいに。
オーバーロードたちはそのお目付け役のようなものだった。
彼らは、オーバーマインドの一部になれないのでこの役を担っていた。
その進化は、まだ精神構造が固まっていない子供たちから始まっていく。
つまり、「新人類(子供たち)」と「旧人類(大人たち)」とでも呼ぶべき両者はここで種として断絶する。
読む前は、「進化」という言葉が持つ前向きな雰囲気から何となく結末を楽観視していたけれども、この部分で進化が持つもう一つの側面、旧世代との決別に気付きゾクッとした。
我々ホモ・サピエンスだって、それ以前の類人猿から進化してきたのであって、いきなり今の状態で地球に存在したわけではない。
理屈では分かっていても、心の奥では現人類を特別視していたのだろう。
我々も宇宙の規模からみれば何も特別なことはないのだ。
個と集団。意識とは。人類とは。そんなことを考えさせられる楽しい読書でした。